後遺障害9級について
目次
ここでは後遺障害9級について説明していきます。
9級が付く場合、殆どの場合でちょうき入院を強いられ、更に手術を受ける場合も多く、本当に重大な事故であり、重い傷病を負うこととなり、その後の人生を一変させることが多いです。
そのような後遺障害9級で正しい賠償を受けるために以下で説明していきます。
1 後遺障害9級の類型
後遺障害9級は以下の通り17種類あります。
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後遺障害9級1号
後遺障害9級1号の症状は、「両眼の視力が〇・六以下になつたもの」です。
後遺障害認定においては、視力とは基本的に眼鏡やコンタクトなどを使った矯正視力を指します。
それゆえ、眼鏡やコンタクトを使っても両目の視力が0.6以下になった場合、後遺障害9級1号に認定されます。
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後遺障害9級2号
後遺障害9級2号の症状は、「一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの」です。
眼鏡やコンタクトを使っても片目の視力が0.06以下になった場合、後遺障害9級2号に認定されます。
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後遺障害9級3号
後遺障害9級3号の症状は、「両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの」です。
後遺障害9級3号のような視野障害については、基本的にゴールドマン型視野計で視野角度を測定します。8方向の視野角度の合計が、正常な視野角度の合計値の60%以下(336度以下)になると、視野障害と認められます。
半盲症とは、視野の右半分または左半分が欠けてしまうことをいいます。
視野狭窄とは、視野が狭くなることをいい、視野の縁が全体的に狭くなる症状と、視野の一部がランダムに狭くなる症状があります
視野変状とは、半盲症や視野狭窄以外で視野が欠けてしまうことをいいます。
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後遺障害9級4号
後遺障害9級4号の症状は、「両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの」です。
両目がまぶたを閉じたときに角膜が完全に覆われない状態になると、後遺障害9級4号に認定されます。
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後遺障害9級5号
後遺障害9級5号の症状は、「鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの」です。
鼻の欠損とは、鼻の軟骨部がすべて失われた、鼻の軟骨部の大部分が失われたことをいいます。
鼻の機能に著しい障害を残すとは、鼻呼吸が困難である、嗅覚が失われたことをいいます。
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後遺障害9級6号
後遺障害9級6号の症状は、「咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの」です。
咀嚼機能に障害を残すとは、固形の食べ物のうち、たくあん、らっきょう、ピーナッツなど一定の固さのものは咀嚼がまったくできないか、十分にできないことをいいます。
言語機能に障害を残すとは、以下の4種の子音のうち、1種以上の発音ができない
口唇音(ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ)
歯舌音(な行、た行、だ行、ら行、さ行、しゅ、し、ざ行、じゅ)
口蓋音(か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん)
喉頭音(は行)
ことをいいます。
かみ合わせや顎関節などの障害で固めの食べ物を十分にかめない、一部の音が発音できないという2つの障害が残ったとき、後遺障害9級6号に認定されることになります。
どちらか一方の障害が残った場合は、後遺障害10級に認定されます。
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後遺障害9級7号
後遺障害9級7号の症状は、「両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの」です。
・両耳の平均純音聴力レベルが60デシベル以上
・両耳の平均純音聴力レベルが50デシベル以上かつ最高明瞭度が70%以下
の場合に、両耳の聴力が1メートル以上の距離で普通の話し声を理解できないと判断され、後遺障害9級7号に認定されます。
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後遺障害9級8号
後遺障害9級8号の症状は、「一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの」です。
耳に接しなければ大声を解することができない程度
平均純音聴力レベルが80デシベル以上
一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度
平均純音聴力レベルが50デシベル以上
の場合に、片耳の聴力は耳の知覚でないと大声を理解できない、もう片耳の聴力は1メートル以上の距離で普通の話し声を理解するのが難しいと判断され、後遺障害9級8号に認定されます。
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後遺障害9級9号
後遺障害9級9号の症状は、「一耳の聴力を全く失つたもの」です。
「一耳の聴力を全く失った」とは、片耳の平均純音聴力レベルが90デシベル以上の状態を指します。
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後遺障害9級10号
後遺障害9級10号の症状は、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」です。
脳や神経に障害が残り、働くことはできるものの内容にかなりの制限がかかる場合、後遺障害9級10号に認定されることになります。
具体的には下記の2つがあります。
ア 高次脳機能障害の場合
高次脳機能障害が残った場合、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動能力の4つの能力のうちいずれか1つが相当程度失われれば、後遺障害9級10号に認定されます。
イ 脳挫傷・脊髄損傷による身体性機能障害の場合
脳挫傷や脊髄損傷による身体性機能障害で腕や足に麻痺が残った場合、以下の状態にあれば後遺障害9級10号に認定されるでしょう。
片側の腕または足に軽度の麻痺が認められる
障害のある片方の腕では文字を書くことが難しい
独りで歩けるが、障害のある片足のため不安定で転倒しやすく、速度も遅い
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後遺障害9級11号
後遺障害9級11号の症状は、「胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」です。
9級11号に認定されうる症状には、呼吸器の障害、循環器の障害、消化器の障害、泌尿器の障害など多岐にわたります。器官系ごとに認定されうる症状は下記のとおりです。
・呼吸器
動脈血酸素分圧が60Torrを超え70Torr以下で、動脈血炭酸ガス分圧が限界値範囲内(37Torr~43Torr)
・循環器
心機能が低下し、平地を急いで歩くなどおおむね6METsを超える強度の身体活動が制限される
ペースメーカーが植え込まれている
心臓の弁を置換し、継続的に抗凝血薬療法を行う必要がある
・消化器など
食道狭窄による通過障害がある
胃に消化吸収障害およびダンピング症候群がある
小腸を大量に切除し、回腸と空腸の長さが100センチメートル以下
小腸皮膚瘻が残り、瘻孔から1日あたり100ミリリットル以上が漏出する
便秘があり、用手摘便が必要
便失禁があり、常時おむつの装着が必要
肝硬変
膵臓に外分泌・内分泌の両方の機能障害がある
腹壁瘢痕ヘルニア・腹壁ヘルニア・鼠経ヘルニア・内ヘルニアがあり、常時ヘルニア内容が脱出や膨隆などの状態にある
・泌尿器
じん臓を失い、GFR値が50超~70
じん臓を失っていないが、GFR値が30超~50
尿禁制型尿路変更術を行った
排尿障害があり、残尿が100ミリリットル以上
蓄尿障害があり、切迫性尿失禁や腹圧性尿失禁のため常にパッドを装着しなければならないが、パッドの交換までは不要
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後遺障害9級12号
後遺障害9級12号の症状は、「一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの」です。
手指を失うとは、手指を中手骨または基節骨で切り離した、近位指節間関節(親指の場合は指節間関節)において基節骨と中手骨を切り離した
場合をいいます。
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後遺障害9級13号
後遺障害9級13号の症状は、「一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの」です。
手指の用を廃するとは、
・末節骨が半分以下の長さになった
・中手指節関節または近位指節間関節が、通常の半分の動きに制限されている
・おや指を橈側または掌側に曲げたとき、通常の半分の動きに制限されている
・指先の腹部分・外側部分の皮膚の表面や内部の感覚が完全にない
場合をいいます。
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後遺障害9級14号
後遺障害9級14号の症状は、「一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの」です。
「足指を失ったもの」とは、中足指節関節から先を失った状態、つまり足指の根元から先を失った状態となります。
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後遺障害9級15号
後遺障害9級15号の症状は、「一足の足指の全部の用を廃したもの」です。
「足指全部の用を廃する」とは、
・親指の末端骨が半分以上失われた
・親指以外の足指が中節骨もしくは基節骨で切り離されたか、遠位指節間関節または近位指節間関節で切り離された
・中足指節間関節か近位指節間関節の可動域が通常の半分以下に制限される
場合をいいます。
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後遺障害9級16号
後遺障害9級16号の症状は、「外貌に相当程度の醜状を残すもの」です。
顔や体の露出するような箇所に5センチメートル以上の線状の傷が残った場合、後遺障害9級16号に認められます。
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後遺障害9級17号
後遺障害9級17号の症状は、「生殖器に著しい障害を残すもの」です。
「生殖器に著しい障害を残す」とは、
・陰茎の大部分を欠損する(陰茎を膣に挿入できないと認められるものに限る)
以下のような勃起障害が残る
・夜間睡眠時に十分な勃起がないことが検査で認められる
・支配神経の損傷など勃起障害の原因となりうる所見が検査で認められる
以下のような射精障害が残る
・尿道または射精管が断裂している
・両側の下腹神経が断裂し、機能が失われている
・膀胱頸部の機能が失われている
・膣口狭窄を起こしている(陰茎を膣に挿入できないと認められるものに限る)
以下のいずれかが画像所見で認められる
・両側の卵管が閉塞するか癒着を残す
・頸管に閉塞を残す
・子宮を失う
2 後遺障害9級の慰謝料
後遺障害9級の後遺障害慰謝料は、自賠責基準で249万円、弁護士基準で690万円となります。431万円もの差があります。
弁護士基準を採用させるためには弁護士に依頼をするか、自ら訴訟提起する必要があります。
弁護士に依頼することで弁護士基準を採用してもらえるのは、弁護士であれば訴訟をすることは容易であり、適切な訴訟遂行をすることができるため、あまりにひどい条件の場合、裁判を起こされる可能性が高いため、わざわざ訴訟とせずに弁護士基準を採用して示談したほうが双方にメリットが多いことに理由があります。
いくらご自身が訴訟提起、遂行が出来ると言っても、一般の方が適切に行うことは困難であるため、保険会社は任意保険基準により損害計算をします。
慰謝料も自賠責と同じか多少上回る程度の金額を提示されます。
後遺障害慰謝料だけでも弁護士に依頼すべきといえます。
3 後遺障害9級の逸失利益
後遺障害が認定されると、残存した後遺障害のせいで労働能力が低下するとされます。
等級ごとに一律に扱われ、低下した労働能力分について逸失利益が支払われます。
ただし、醜状痕や歯科などの場合、ケースによっては逸失利益がなし、もしくは、かなり減額されることもあります。
逸失利益は下記のように計算します。
事故前年の年収×労働喪失率×労働可能年数の上限67歳までのライプニッツ係数
例えば、40歳、年収500万円の方であれば、9級の労働喪失率は35%となっており、
67-40=27年のライプニッツ係数は18.327となります。これを計算すると
500万円×0.35×18.327=32,072,250円
となります。
事故の重大さからすれば当然ですが高額になることが一般的です。
以上後遺障害9級について述べてきました。
繰り返しになりますが、非常に重い傷病故、安易に示談することは避けましょう。
その後の人生への影響が計り知れませんので。
後遺障害9級に該当するような怪我を負った場合や既に認定されている方など、交通事故でお悩みがあれば是非当事務所の初回無料相談ください。
交通事故に注力する弁護士ならではのアドバイスをさせていただきます。
今後の見通しをしっかりと述べさせていただきます。